裁判による離婚

協議離婚に応じず、調停も不成立となれば、いよいよ裁判です。そして、“原告と被告を離婚する”という判決を勝ち取らねば、離婚はできません。
また裁判では、民法で定められた離婚原因が証明されないと、離婚は認められません。
ここでは、裁判による離婚と、法律上認められる離婚原因について見ていきましょう。

裁判所に係る手続きは、行政書士が関わることはできません。

判決離婚・認諾離婚・和解離婚
何かをやりたくない、という人に対して、その意思に反して行動を強制するためには、法治国家においては裁判で勝ってその判決に従わせるしかありません。立ち退き請求や損害賠償請求をイメージしていただければ、わかりやすいでしょうか。
離婚も同じです。片方が離婚したくない場合において、離婚したい側がその要求を通すためには、裁判するしかありません。しかし、日本ではいきなり裁判ではなく、まずはお互いに話し合い、それがまとまらなければ調停、それでも決着がつかない場合、ようやく裁判となります。
調停だけでも、半年や1年はすぐに過ぎてしまいますし、裁判となればもっと時間はかかるでしょう。また、全部自分でという方もいらっしゃいますが、多くは弁護士を立ててということになりますので、その費用も負担になるでしょう。
そのような事情も影響するのか、日本において裁判で離婚する割合は全体の1%未満、とも言われます。

裁判においてその主張が認められ、“原告と被告を離婚する”という判決が得られて成立するのが、判決離婚です。裁判で離婚したというのは、具体的には判決離婚を指すと考えていいでしょう。

他に、離婚裁判の途中であっても、裁判外で話し合い、離婚に落ち着くケースもあります。これが、和解離婚です。

20歳未満の未成年の子がいない、財産分与等の未解決の問題がない場合には、離婚の訴えを起こされた被告側が、相手の請求を認めて離婚する、認諾離婚というケースもあります。
離婚原因
よく「○○という理由で離婚することはできますか?」という質問を受けることがあります。お互いが納得して離婚する場合においては、どんな理由でも構いません。極端な話、理由がなくても問題ありません。なんとなく、でもいいんです。離婚届に離婚理由を記載する場所はありませんし、窓口で尋ねられることもありません。

しかし、裁判となると話は別です。

裁判で離婚が成立するということは、離婚したくない人を強制的に離婚させる、ということです。曖昧な理由で、あるいは裁判官の印象などによって、そのような重大なことを決めることはできません。なんとなく、ではダメなんです。ある程度具体的に、限定されたものでなければなりません。
裁判における離婚理由として、民法では以下の5つが認められています。

1.不貞な行為があったとき
配偶者以外の人と自由な意志に基づいて性的関係を持った時。裁判上は、ある程度継続的であることが求められます。
2.悪意で遺棄されたとき
故意に配偶者の義務を尽くさない場合。これには、同居義務、扶養義務、協力義務があります。
家に帰ってこない、生活費を稼がない、入れない、別居中であっても生活費を送ってこないなどは、これに含まれます。
逆に言うと、何も言わずに出て行って別居状態となり、連絡もせず生活費も渡さずにいると、悪意の遺棄と取られる場合があります。
3.生死が三年以上明らかでないとき
最後に生存を確認してから三年以上経ち、生死が不明の場合。どこにいるかは知らないが生きているのは知っているなどの、行方不明とは、異なります。
4.配偶者が回復の見込みのない精神病にかかったとき
治療が長期にわたり、離婚を請求する方がこれまでに誠実に看病してきて、離婚後の介護者や、治療費の問題など、今後の治療や生活について、ある程度見通しが立つなどしないと、認められることは少ないです。
5.その他、婚姻を継続しがたい重大な事由があるとき
性の不一致やDV(ドメスティックバイオレンス)、浪費癖や極端な宗教活動、犯罪を犯して服役などが含まれ、ここには性格の不一致も含まれます。
離婚が認められた判例は様々ありますが、客観的に見て、夫婦としての関係が破綻していて、回復不可能、というのがポイントです。