遺言があってもトラブル

こんな遺言、トラブルの元!
“A土地の半分を長男○○に、もう半分は次女△△に相続させる”
兄弟平等に、という意識でこのような遺言を希望される方がいらっしゃいます。しかし、土地の半分という表現では、相続の対象を特定しているとは言えません。
また、ひと口に土地半分と言っても、道路に面した側半分と、どこにも出られない土地半分では、全然価値が違いますし、その上に建物が建っていれば、それをどう分けるのか、ましてやどちらかがそこに住んでるとなると、もうトラブルを残すために遺言を書いたようなもの。
どうしても半分ずつ相続させたいのであれば、生前に分筆して登記し、それぞれを登記簿謄本通りに遺言に記載して、特定しなければなりません。
“妻■■に、自宅の土地建物を相続させる”
「自宅」と言えば、一般的に見れば特定されているように読めますが、法律上では、曖昧表現に当たります。
遺言は不動産の相続登記をする際に必要なもの。しかし、これでは登記手続きには使えません。遺言で不動産を相続させる場合は必ず、不動産登記情報(かつての登記簿謄本)通りに、所在、地番、家屋番号等を記載する必要があります。
“長女▲▲に、B建物をまかせる”
まかせる、という表現では、所有権が移転するのか、使用貸借をさせるだけなのか、判断に困ります。使わせる、管理させる、なども同様です。
所有させる意思があるのなら、はっきりと、“相続させる”と遺言せねばなりません。
“財産は、争いのないよう、家族で分けるように”
こうなるともう、なんのために遺言を書いたのか、仏壇に向かって問いかけたくなりますね。これでは、せっかく遺言を書いても、意味を成していません。(付言事項は大事ですが、法的に有効な遺言という点から見ると、無意味です。)

遺言が無い場合の相続は、基本的に遺族間の話し合いをして、「遺産分割協議書」を作成し、それを以って相続手続きに入るのですが、このような内容の遺言では、遺言が無い場合となんら変わりありません。

遺言を書く際は、相続の目的物をはっきり特定し、誰にどれだけ相続させるかを明確にしなければなりません。

法律的にも内容的にも申し分のない遺言を作成するには、専門知識が不可欠です。
その為にも、公正証書遺言を作成して、その内容、法的効力も確かなものとしておくことを、強くお勧めしますし、どうしても自筆、秘密の形式で、と仰る場合はなおさら、必ず専門家にご相談なさってください。
せっかくのご遺志、せっかくの遺言を無駄にしない為にも。