遺言が無いトラブル

遺言さえあれば!
相続人が「配偶者」と「兄弟姉妹」の場合
被相続人が亡くなって、配偶者のみが残される場合、当然に全財産が配偶者のもの、と考えられがちですが、法律では、被相続人の直系尊属である親や祖父母、そして兄弟姉妹にも、相続人の資格を与えています。この場合、法定相続に従って分割するとすれば、兄弟姉妹が財産の1/4を相続するという計算になります。
普段あまり行き来が無い兄弟姉妹と言っても、葬儀や法事等では顔を合わせるもの。その場で思わぬ要求をされないとも限りません。

しかし、兄弟姉妹には、遺留分が存在しません。もし遺言で、“全財産を配偶者に相続させる”旨を記してあれば、兄弟姉妹は相続財産に一切手出しをすることが出来ないので、トラブルは未然に防ぐことができます。

子供がいない場合の相続は、相続人の範囲が広がってしまって、複雑になりがちです。また、兄弟姉妹の法定相続分は、代襲相続しますので、兄弟姉妹が死亡していれば、甥、姪まで、相続する権利を有しますので、更に手続きが煩雑になることは、容易に予想できることでしょう。
お子さんのいらっしゃらないご夫婦は、残される人の為にも、遺言を書くことを強くお勧めします。
相続人が「配偶者」と「実子」と「配偶者の連れ子」の場合
配偶者の連れ子と実子、どれだけ分け隔てなく愛情を注いでも、法律上、当然に同等の扱いを受けるものではありません。この場合、法定分割をするなら、配偶者1/2、実子1/2、連れ子0となってしまいます。もちろん、遺産分割協議もできますが、まとまるとも限りません。

この場合も、“配偶者1/2、実子と連れ子は共に1/4の割合で相続させる”と遺言しておけば、実子の遺留分も1/4なので、それ以上の分け前を主張することが出来ません。

うちは仲のいい家族だから、とお考えかもしれませんが、相続ばかりは、始まってみないとわからない、本音が見えない、というのが実情かと思われます。この場合、遺言をすることも重要ですが、できれば、配偶者の連れ子を養子縁組して籍にいれてしまうのが、最も根本的な解決にもなります。養子と実子の間に、相続の権利の差はありません。
内縁の妻がいる場合
現在の我が国では、内縁関係に法的に保護されておらず、相続権もありません。ましてや、法的な配偶者がいる場合など、権利が保護される余地は少ないでしょう。

遺留分を超えない範囲を配慮した遺贈を遺言しておけば、内縁関係であっても確実に財産を残すことが出来ます。
事業継承
会社の株式があまり分散すると、経営基盤が脆弱にもなります。また、名目上の株主として経営には口を出さないという約束で、複数人の相続人がそれぞれ株式を相続したとしても、相続は次の代にもそのまた次の代にも続きます。先々にその約束が守られるかは…

相続人のうち、経営を引き継ぐ人がいるのなら、その人に株式や会社資産が集中するよう、遺言を残すことが必要です。

しかし、その場合、相続税や他の相続人の遺留分に、十分配慮しなければなりません。

これらは、ほんの一例です。

トラブルというのは、本当に様々な形でやってきます。それを避ける為に、できることがあるのなら、手を打っておくべきではないでしょうか。
相続が開始される時、当然のことながらご本人がその場にいて、臨機応変に対応することは、不可能なのですから、せめて、遺言という形で、ご自身の遺志を明確にされることを、お勧めいたします。